風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

星の卵

君の望んだ探し物
一周回って腕の中
君は自分を顧みず
自由という名の殻の中

まあるい世界の空の上
虚ろな波紋は透き通り
星屑の中をかき分けて
何処へなくとも散っていく

隔たりがあれば幸いで
壁の向こうに耳はなく
しゃっしょこばった顔の儘
蔓草に巻かれ措いていく

ねえ 本当に それは
ねえ 宝石の様に光るそれは

虚ろな君と
陰鬱な僕と
星影の作る大小は
伸びて縮んで
笑いあい
飽くまで踊った白い丘

夜明けを告げる鐘の音と共に
青鈍色のアゲハが飛んだ
沢山沢山沢山飛んだ

音もなくてふの羽が空を覆っている
夜の空を朝の空に変えていく

君のぽかんとした顔の瞳を覗く
真っ暗で透き通り僕は怖くなる

tumble

すれ違う光の帯
君の横顔 駆け抜ける先

鬱蒼とした小道を乗り越え
人知れぬ廃墟の先
水底より浮かんでくるサイン

薄紅色の花を掠り
緑の色をかき分け進む
追いかける君の影は
まだ 遥か先
青色の溜まる君の影は
明るさと暗がりの繰り返しを抜け
虹色に交わる視線の先 掻き消えた

なだらかな河川敷を越え
乾いたビルの稜線を進む
ビル風に背中を押され
導かれる様に人工の星を結ぶその先へ

強張った頬を指先が撫でる
上がる息遣いが空へと昇っていく

君は瑪瑙の空の下
星の娘たちと遊ぶ
太陽に辟易した月の顔を横目に
僕を置いて
笑う様に歌は広がっていく

 

かさね

かさねかさね
夜道の空に
かさねかさね
心の煙に

滑る様に夜を行く
ふいに段差に跳ねて
跳ねれば懐かしい草の匂い
夕方が浮かんで消える
風を走る

華美にかさねた足跡は
懐かしさとは程遠い
思い出しても何処かに行って
思い出しても何処かに消えた

遅れてきては
余所見の先の
置いては行けない独りぼっち
両手を握る

かさねかさね
夜道の空に
かさねかさね
心の煙に

忘れてしまった探しモノが
かさなり落ちた空をぼんやり見てる

re Response

あみだくじを辿るように
最初の君を探しに行く
忘れきれない温もりとか悲しさを
今も握っている掌は開かない
手放したい後悔と
戻らないもどかしさの中で
身体と心は別じゃない
そんな解っている事に
「本当に?」って繰り返す
昔のボクが今も言う

周り一面何もない
眩しさだけの世界に浸かる
固く瞑った目で見通したら
見えるものも見えないまま
そんな事も捉われて判らない
日常は淡々と過ぎていった

はっきりとした境界線
ボクは離され自由になった
望む望まないにかかわらず
小舟は滑り出していく
手足の重さを感じながら
涙の海原に心もとなく漂い
遠くの場所を
また独り辿りなおすみたいに

 

 

指先も見えぬ暗闇の中
白平盃が一つコトリと置かれた

中空より滴る
一筋の糸の如く
その隆線を落とす
あるかなしかに色づいた
黄金色の液体が
白平盃に微かな音も立てず
流れ込み満たしていく

なにものに捧げる事なく
ただ掌を合わせ
なにものに縋る事なく
ただ掌を合わせ

白平盃が満ち
その嵩が零れ落ちていくのを
見ている

砂礫の君

座った君は歩き出す
歩けば纏う砂礫の君は
重さに疲れまた座る
座れば落ちる砂礫の山は
灰に煙って渦を巻く
渦巻く煙より見上し空は
色めき輝く胡蝶の夢

砂礫の君よ
遠くへ高く
砂礫の君よ
見えぬ先へと

全てをかなぐり捨て生きる事など
出来はしないと知りて尚

すいちる


わかりきった時間
ワタシだけの時間
呼び水になるのは
他人の互換
どこまででも近く
寄り添うなら道理
何時まで待ってても
働かない慟哭

すい すい
待ちわびる 人の海
少しばかりの 目覚め
薄目を開けた 薄暮の日

エネルギッシュに輝く
太陽は東雲
遠くから見てる 笑ってるけれど
他所にやってよ 眩しいだけの
五月蠅いだけの 塊りなんだったら
飾りなんだったら

わかりきった時間
ワタシだけの時間
呼び水になるのは
すい すい

紙屑みたいに考えを潰して
頭から追い出し
何も無い顔して
何時何時出やる
溢れかえるまで

働かない慟哭
動かない瞠目

何時何時出やる
何時何時出やるは
目覚めぬままの
赤子と笑う