風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

キナナク

緑の薔薇の園の奥深く
仮面で出来たお城があるよ
道化師に騙された少女が辿り着いたのは
朽ちた瓦礫の山の中さ

嗚呼騙されたって
悔しかったら泣いてみなよ
後悔ばかりを責めてるみたいに
マゴマゴしてる内に時間ばかりが過ぎて
すれ違う危さには気が付いてないもの


緑の薔薇の茨の奥深く
辿り着いた頃には浮きも沈みも
その身体紅く染め上げて尚
朽ちて剥がれる仮面の心

嗚呼知らなかったなんて
自分を責めて泣いてみなよ
朝咲く花に為ったつもりで
尊い名前を高く掲げても
十字架の窓辺じゃ顔が見えないから


一個として動き回る八重百足
緑の薔薇を犯す様に
黒い脚は行進を続ける
いずれ緑の園を食い荒らして
今に仮面の城を多い尽くすだろう

少女は仮面の城の中
道化に騙され贄となる
幾日すればほとぼりも冷めて
遠い所で道化師は笑おう

嗚呼騙されたって
悔しかったら泣いてみせなよ
気付いていたって吠えるくせに
ちっぽけな幻想に縋ってさ

嗚呼知らなかったなんて
自分を責めて泣いてみせなよ
踊るように見えているのは
全て幻の最中の時間
泡の様に割れて消えても
漣ばかりは度重なるもの