風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

みくす

 
薄明りの街並みの中を捉えようもない影が
僕の背中を追い越していく
風鈴みたいな音と思い出とが
風景の中から溶け出していく

随分夜も更けてきたものだ
いつの間にか煤だらけの手で顔を擦った
きっと笑われる様な顔をしてると思う

同じ時間の中で僕達
泣いたり笑ったり怒ったりしたけれど
たぶんそれは夢みたいなものだね
君の声音を聞いても知らんぷりしてた
本当に大切なのは「 」
そんな当たり前の事だって見えてなかった

ボタンの掛け違いから始まって
お仕舞いまでそのまま
だらしなく胸元の空いたパジャマみたいなもの
ただ 当たり前が欲しかっただけだと
痛みを忘れた頃に
何も残ってない事に気づく

月ばかりが大きくて
空は憎たらしい位黒く澄んでいる
思い出した様に昔覚えた歌を歌う
心に雑じったノイズにわらいながら