風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

ピグマリオン


誰にも見せない
水で書いた文字
触れて四散した
ふっと笑う
気を取り直して
纏った色々を翼の影の様に背負って
歩き始めた人 地に地に歩く

何処までも 空までも 道がある
途方も無い
だって 切れ目の無い
この過去と記憶の二重螺旋が
忘れる事も消え去る事も許さない
見えない痛みだけ
見詰める 煮詰める 溢れる Ah...

近すぎた 判らない
全景を知らない
目を上げて
上を見て
上だけ見て
自分の手足の感触が
頭から消えていく

太陽はまるで作り物の振り子
逆さに揺れて 光を与えるだけの振り子
生じた瞬間の出合い
そればかりはどうにも出来ない

群雨の夕べ
冷めて立ち 止まる陰
刹那の 切ない 時雨

抱きとめて爪をかけ
痛みに声を上げる事も無い
にこにこと微笑んだ顔は
それでも
それでも
君の 君の 

夜道に日が暮れる
気づけば数歩の距離で
時ばかり早く塗り替わる

伸ばした手が固まった
繋がって
繋がった様に見えて
それは影が重なって見えるだけ

太陽の振り子
固まった 重なった
影を
離れたり
近づけたり

それが残るだけ
失す事が消えるだけ
鼓動が戻るだけ
君の 僕の