風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

アイアンマン

ボルトを回す仕事をしてる
古い男はボルト回す
彼女の声を聴く為には
回すボルト
ギュルギュル

ネジ止め瓶が割れても
音もしやしないのに
男の回す
鉄の音だけが工場に響く

ボルト回す男一人
腕にはとうに感覚が無い

彼女の声は聞こえて来ない
ボルト回す
ずっと

鉄が錆びて落ちても
錆びて折れた
骨組みだけの建物の中

未だ響く秘めた想い
ボルト回して
なんになるのか?
遠くで見てる仲間にゃ
解らない

いつかボルトの山が出来れば
それを登って彼女の傍へ

彼女の声は聞こえても来ない
山彦の様な
ボルト回す音だけ響く