風見鶏テキスト

たまに思い出した様に散文詩を書きます。

e(a)ffection

 

 


雨粒が一つ 弾く振動が一つ
波紋に揺れて 色を変えて

手を掲げてお道化るように
歌う 歌う 歌う 音

歩く足音 土の上に足跡
色とりどりの匂いを立ててさ

手を掲げて祈るように
歌う 歌う 歌う 音

雨の中の一粒が
僕の肩を少し濡らす
鏡の表と裏のこの世界では
君の肩も少し濡らしているのかな

雨粒が一つ 弾く鼓動が一つ
波紋に揺れて 奔放に跳んだ

歩く足音 一つ 足跡揺れて
手を掲げてお道化るように
歌う 歌う 歌う こえ

同じ場所 同じ足跡 ぐるぐる
馬鹿みたいに口を開けて
口の中の水たまり 落ちる雨音は
メトロノームみたいに
規則正しい
 

Album

 

君が望むなら
小さな檻の中に手を突っ込んで
指先に触れる感触だけ
君が望むなら
夢見るように呼吸を繰り返し
空虚な時間にため息をつく

えいえんと言う
その大きさは
君の両手で量れない

それでも
君の悲しみを知ろう
君の喜びを知ろう
呼吸は泡に
声は波に
広がり続けて消えていく
その時までは

君が望むなら
夢見るように呼吸を繰り返し
空虚な時間にため息をつく

壁の凹凸を
何かに見える天井の模様を
それが真実と気が付くまでは

[[[ゲージ]]]

 

思い切りがさばった
荷物を持って
並んだ並んだマークのある道
葬列みたいさ誰もかれも顔を見ない
伏せた目の中を魚が泳いだ

思い返さないように
頭を振って踊る踊る 心の中だけ
アナタを見たよ
揺れる陽炎のディスプレイの中で
いつか到着すると字幕に書いてある
見失わない様に
見失わない様に
おまじないみたいな

混ざりあう街の混ざり合う色が
排水溝に流れる水みたいに
収束しながら落ちていくんだ
やぶれかぶれの色を持て余して
やがて真っ黒に変わりゆくままに

思い切りがさばった
荷物を持って
並んだ並んだマークのある道
葬列みたいさ誰もかれも顔を見ない
伏せた目の中で太陽が昼寝

降りてきたやぶれかぶれの色の中泳いで
決まりきった繰り返しを求めて
思い切り振りかぶって一歩
靴の鳴く音一つ闇へ消えた


思い切りがさばった
両手を降ろし
並んだ並んだマークのある道
思い思い煌めいた伏せた目の中で
浮かんでくる言葉ばかりが
他人を見てる

ねーむれすれす

 

 
あの日の夕焼け
どの日の夕焼け?
偽りの思い出に縋るのは
遠い国にいる国のない王様達
臣下のいない怒りっぽい王様
灰色ケープを引きずって
ラッパを吹いてご満悦

王様の目の中に流れる景色は
どれも瑠璃色の輝きで
灰色に踏みしめた地面を
のっしのっし歩く
瑠璃色の目をして
熱く乾いた道を歩く

点と点を結んだら
線は逸れてこんがらがって
千切れた棒が狂った様に
何処かに飛んで行っちゃった

瞼を開ける 美しく
瞼を閉じて 真っ暗け
瞼を開けて 灰色の黒い窓に映るのは
声も聞こえぬこの空の下

太陽は沈む
言葉は噤む
道化師は独り踊り
満面の笑みで蛹の様に泣いた
 

REpane

 
しぼんだ風船
空気を入れても
ひゅーひゅーもれて
しぼんで痛い

寂しくって悲しくって空しくって
惨めで怖くて背中が篤い

目も鼻も口も指も
何も望まない
息を止めても消えていく

しぼんだ風船
苦くて痛い
ひゅーひゅー息の音
置く場所も無い

色とりどりの空気を集めて
大きく息を吹き込んでも
わたしの輪郭変わんない
硬い風船変わんない
 

あのころの

 
あのころの目
あのころの色

黒いほど群青の空
眩しいほど真っ白な雲

遠い日の町の空気と
光と影と雑踏
しんぴんの目で
しんぴんの心で
何も考えず歩いて

そうして
どこへ歩いて行ったの?
どこへ歩いて行くの?
飛び石みたいに家路を探す
さみしい背中は丸まって
足音だけを繰り返し
切なく砕けた
砂と石

あのころの目と
あのころの色と
切なく溶けた
夢の影

一凛 花は散り 一片空へ
吸い込まれる様に飛んでいき
見えなくなるまで見送った

きっと黒いほど群青の空へ
きっと眩しいほど真っ白な雲を越えて
 

[niche]

 

時計の針だけ信じて
目まぐるしく走る白黒 数字達
ハッキリとしたコントラストで
それは人の容に見えた
ネジが緩んで加速する
それをただ続けて
それしか無いみたいな顔をして
手と足だけで行進する

ねぇ気づいてよ
赤と青と教えて貰った
その口で紫を語るんだからさ

ねぇ気づいてよ
穴の中で空を見上げてる
暗闇は何処までも距離が無い
それが眩しいか暗いかの違いしかないって


体に降り積もる雪みたいに
重さを持って
熱を持って
貯まっていくよ 溶けもせず

ゆっくりと苦しみをもって
ゆっくりと悲しさをこめて
ゆっくりと厳粛に
口ずさむ音 薄く塗り重ねて
錆みたいにぽろぽろ剥がれた

ねぇ気づいてよ
理屈にもなってない
見て見ぬ振りの その振りを

ねぇ気づいてよ

ゆっくりと苦しみをもって
ゆっくりと悲しさをこめて
ゆっくりと厳粛に